株式会社下堂園 代表取締役社長 下堂薗豊 氏
掲載号:「中小企業かごしま」2009年7月号掲載
昭和29年の創業から半世紀余り。「世界に誇る、美味しい鹿児島茶を、全国、そして世界中の方々に飲んでいただきたい」その一心で、日本茶の普及に全力で取り組んできた会社がある。それが株式会社下堂園である。 本号では、32歳の若さで社長に就任し、会社だけではなく業界全体を積極的に引っ張っている下堂薗豊氏にインタビューさせて頂いた。
お茶は本当に美味しいんです
社長室に案内され名刺交換を行い、さあ、これからインタビューだと思っていると、何と社長自ら急須に茶葉を入れ、湯冷ましし、私どもに直接お茶を入れて頂きました。恐縮したのと同時に、新鮮な驚きでこちらの緊張もほぐれることができました。
驚かれたかもしれませんが、お茶はできるだけ自分で入れるようにしています。自分の好みにあった温度・タイミングがあるんです。80℃くらいが一番好きですが、水だしのお茶もおいしいですよ。お茶をどうやっておいしく入れようかと考えること自体が頭にも良いのです。お茶の消費が減っていると言われますが、お茶は世界に誇れる最高の飲料だと思います。
昭和29年に父親である先代社長が鹿児島市高麗町で創業。その後、茶業団地開設とともに鹿児島市南栄町に移転。昭和52年に東京営業所を開設し、これからという時の昭和55年に60歳の若さで先代社長が亡くなり、豊氏(当時32歳)が社長に就任。
社長就任時の苦労について
それまでは弊社で販売を担当していたので、ある程度の経験はあったのですが、やはり既存のお客様との関係など不安はありました。当時は、「つぶれるんじゃないの?」などの根も葉もない噂を耳にしたりもしました。
当時は、東京営業所を開設して間もないころで、社長就任時は朝から晩まで休みなく働いていましたね。こちらから様々な県に赴いたり、逆に様々な地域から来てもらったりしながらお客様との信頼関係も築いていきました。とにかく頑張りましたね。
業務内容について
全国に茶葉を卸すのがメインの業務ではあるのですが、特にここ10年間のペットボトルのお茶の普及により環境が変わってきました。
本社1階と荒田に「ティースペース・ラサラ」をオープンし、茶器を使って入れる美味しいお茶とともにお茶にあった菓子も楽しんで頂いています。ここでは、茶香炉からの香ばしい香りと心地よいBGMを聞きながら、旨みをしっかりと抽出するお茶の美味しい入れ方を始め、茶葉ごとの味と香りの違いや、自分好みの茶器選びなど、21世紀の日本茶文化と豊かな生活を提案しています。
また、全体の売上からすれば1%ほどですが、海外展開も積極的に行っています。国としては、ドイツ、フランス、台湾、中国などです。その中でも、特にヨーロッパでは健康志向が強いため、緑茶成分の効能が知られるようになると、緑茶が徐々に広がるようになりました。文化の違いもあるので簡単にはいきませんが、それでも1995年にはヨーロッパでも厳しいと言われるドイツのオーガニック認証を取得しドイツに拠点を置き、世界に向けてオーガニック・グリーンティー(有機緑茶)の販売を積極的に展開しています。ちなみにブランド名は「KEIKO」です。私の妻ではなく、弟の奥さんの名前から取ったんですよ。
それと、興味深い話なんですが、ヨーロッパでは「しょうが」入りのお茶の人気があるんです。私も、のどの調子が悪い時などには「しょうが茶」を飲むこともあります。
海外では、紅茶専門店で緑茶を扱っているところも増えていますが、世界中の人々に緑茶をもっと飲んでほしいです。
会社の理念・社長のモットー
「お茶を飲む喜び、売る喜び、作る喜び」を社是とし、毎朝全従業員がこの社是と社訓を唱和しています。
また、私自身は新しい考え方を重視しています。私の体験ですが、お茶屋としての概念にこだわらずに、一般の消費者にサンプル品を配り、気に入ってもらえたということもありました。
そして、何よりも大切にしていることが「人を育てること」です。
従業員に望むこと
若い従業員には、既成概念にこだわらず、また、技術を単に継承するだけではなく、さらに良くするためにはどうすれば良いかを考えて欲しいです。そのために様々な勉強をしてもらっています。例えば、月2回土曜日に全員で集まり勉強会を行い、お茶そのものについてやお茶の良さなどについて勉強しています。また、資格試験の受験も奨励しています。
今後の目標
現在創業から55年になりますが、「100年企業を目指す」ためにも、後継者に良いバトンタッチができればと思います。
また、これからも日本茶の素晴らしさを広く伝えていきたいと思います。お客様の「お茶を飲む喜び」、これが株式会社下堂園の変わらぬ目標です。
取材メモ
最後に社長の写真を撮らせて頂きながら趣味に関して伺ったところ、「トロンヴォーン」を吹くこととのことでした。「疲れている時でも練習に参加すると、不思議とその疲れが吹き飛ぶんだよ」と楽しそうに語られていました。